特集 扁桃—今日の臨床指針
III.扁桃炎の臨床
扁桃肥大症
西村 忠郎
1
1藤田学園保健衛生大学医学部ばんたね病院耳鼻咽喉科学教室
pp.797-801
発行日 1985年10月20日
Published Date 1985/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210029
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I.はじめに
扁桃肥大症には口蓋扁桃,アデノイド(咽頭扁桃),舌根扁桃,耳管扁桃のそれぞれの肥大症がある。ここではそれらのうち最も重要な口蓋扁桃とアデノイドの肥大症を中心にして宮者の経験例や臨床研究の成績を混じえて述べる。
扁桃肥大症は一般に生理的肥大と考えられて特別の場合以外は疾患としてあまり重視されていないようである。しかし扁桃肥大に炎症が加わり肥大が一層宮明になると,幼小児においては呼吸困難を招き生命を脅すこともある。とくに扁挑肥大による肺性心の例では重篤な症状を呈する1,2,4)。また扁桃の高度肥大の場合には気道に対する影響があるのみでなく,摂食にも影響し幼小児の発育に影響する。また中耳や鼻副鼻腔に対する大きな影響10)があることも以前より指摘されている。さらには幼小児のアデノイド肥大症の場合は夜間,呼吸が不十分なためにいびきや睡眠障害をきたし,最近注目を集めているsleep apnea syndrome5〜8)の原因になったり,夜尿症や夜驚症の原因にもなる。昼間口呼吸や注意散漫症になることもある。これまでは口蓋扁桃の高度肥大症とアデノイド肥大症が問題になっていたが,著者の研究からは中等度の口蓋扁桃肥大においても幼小児ではかなり大きな鼻呼吸に対する影響があることがわかった5〜7)。
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