鏡下咡語
中西医結合と五官科—訪中見聞録から
大山 勝
1
1鹿児島大学医学部
pp.156-157
発行日 1984年2月20日
Published Date 1984/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209744
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昨年6月に約10日余,中国政府衛生部(日本の厚生省にあたる)の公式招聴で,国際耳鼻咽喉科振興会訪中団の一員として,中国を訪ねる機会があった。団長,副団長,秘書長と随員ならぬ団員5名からなる総勢8名であった。中国を公式訪問する時には,きちんと序列をつけて代表者あるいは責任者を決め,とくにスポークスマンとしての秘書長をおくのだそうである。また,これらが一目で判るように,写真入りで,簡単な経歴と一緒に印刷したものが持参されていた。政府のお役人に対する儀礼的な面もあろうが,体制を重んずる国によくある形式重視の一端をみる思いがした。とは言っても,実際に中国に着いてみると,これが名刺代わりに用いられたり,身分を明らかにするために利用されたりして,結構,役に立っていたようである。
結団式の際,旅行社の人が「秘書長までの三役の方々については,中国政府はとくにVIPとして,送迎の自動車には賓客にのみあてがわれる『紅旗』を恐らく準備されていますよ」と話していた。なるほど北京空港には衛生部のお役人を含む迎えの人々と一緒に黒塗りでいかにも重厚な感じのする車が横付けにされていた。ところが,驚いたことには,われわれ団員のためにも,もう一台の『紅旗』が運転手と通訳とともに準備されていた。北京,上海両市での大学や病院訪問,講演会場への足としては勿論,レセプション会場や観光へ行く時までも使わしていただき,この間,要人としての気分を大いに満喫させていただいた。思いもよらぬ厚遇に,悦に入るとともに,心から感謝した次第である。
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