鏡下咡語
ムンプスワクチン開発について—耳鼻咽喉科医家のために
宍戸 亮
1
1国立予防衛生研究所
pp.1060-1061
発行日 1980年12月20日
Published Date 1980/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209192
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はじめに
ムンプスは発熱と耳下腺腫脹を特徴とする伝染性疾患で,別名流行性耳下腺炎とよばれ,臨床的には耳鼻咽喉科を専門とされる医家各位にも関係が深い病気である。しかし大方の本誌読者も御承知のように,本病は,病気自体は決して耳下腺に限局したものではなく,ムンプスウイルス感染による全身性のウイルス感染症であって,唾液腺腫脹はその1つの部分現象であり,また最も頻度の高い侵襲部位であると考えるべきものである。本病の侵襲部位を一般的に示すと第1表のようで,第1が唾液腺をふくむ内分泌系,第2が神経系,そして第3がその他の臓器ということになる。
1914年Feilingは本病にMumps(Silent displeasureの意)の言葉を与えて以後,西欧ではその言葉が定着した。本病に対してはわが国では古くからおたふくかぜという病名が使われてきたが,最近ではMumpsという言葉をそのまま日本流に発音したムンプスという病名が前述の流行性耳下腺炎の名称に代わって一般的になりつつある。
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