特集 耳鼻咽喉科と感染症
III.各種感染症—診断から治療の実際まで
緑膿菌感染症
由良 二郎
1
,
石川 周
1
,
品川 長夫
1
Jiroh Yura
1
,
Shu Ishikawa
1
,
Nagao Shinagawa
1
1名古屋市立大学医学部第1外科
pp.801-804
発行日 1980年10月20日
Published Date 1980/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209151
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I.はじめに
近年の化学療法剤の開発・進歩は,各分野における感染症の治療ないし予防に多大な貢献をもたらし,特にわれわれ外科医にとっては術後感染合併症の克服が外科手術成績の向上につながるがゆえに,その恩恵を十分に受けたといえよう。しかしながら,これら優れた化学療法剤の進歩は,一方では菌交代症,耐性菌の増加,弱毒菌感染症,opportunistic infectionといった新たな問題点を生じてきている。このような新たな問題点の中で最も注目され,多くの研究者によって検討がなされてきたのが緑膿菌感染症1)であるといえよう。
緑膿菌Pseudomnas aeruginosaの多くは,ピオシアニンという色素を産生し,water bacteriaといわれるがごとく,水道の蛇口,流し,花瓶など湿気のある所,高温多湿の哺育器などに好んで繁殖し,菌の発育条件は幅広く,各種抗生剤に自然耐性を示すものが多いことなどが特徴といえよう。
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