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I.はじめに
聴性脳幹反応(auditory brainstem rcsponscs:以下BRSと略す)は,脳幹部聴覚神経核ないしは神経路に由来する反応と推測されることより1)2),第1に他覚的聴力検査法として,第2に脳幹障害の診断法として応用されることが期待された3)〜5)。著者は以前より中枢神経障害者にBSR検査を行ない,BSRがどの程度まで病巣の局在について診断し得るものか検討を行なつてきた6)〜10)。他の報告者と同様に,テント上病変や小脳・延髄障害のBSRは,ほぼ正常パターンとして記録されたが,聴神経腫瘍をはじめとする小脳橋角部腫瘍,出血や腫瘍による脳幹部実質障害のBSRでは多彩な所見を認めた10)。このようなことから,頭蓋内疾患を大きくテント上・橋部を中心とした脳幹と小脳とに分け検討すると,BSRは広い意味での脳幹障害を反映することのできる検査法であると考えられる。また,BSRの各反応波のoriginを脳幹部聴覚神経核に求められることから,BSRの各反応波の欠損やその潜時の延長などの所見をもつて,脳幹部における病巣の局在診断へ応用する報告がみられる11)16)23)。そこで,著者は中脳より延髄にかけての脳幹部実質障害者16名にBSR検査を行ない,第1に脳幹レベルの病巣の局在診断について,第2に障害の左右差について検討し若干の考察を加えた。本論文中で脳幹とは中脳より延髄までの領域を包括するが,脳幹レベルを臨床上厳密に区分することはできないが,視床・中脳・橋上部・橋中部・橋下部・延髄とに分けて,脳幹の障害レベルを表現した。これは,脳幹部聴覚神経路が上記の各レベルで神経核を介して上行していることからBSRの各波のoriginをこの各神経核に求め,各波の異常によつて脳幹レベルの異常を診断することができるか否かを検討するために試みた。
In 16 patients with brainstem dysfunctions, the author studied the possibility of the topographical differential diagnosis in brainstem lesions by auditory brainstem responses.
The results were as follows : 1. Regarding the laterality of brainstem lesions, the findings in auditory brainstem responses were in general accord with the clinical findings. 2. In four patients with midbrain bleeding, auditory brainstem responses showed the evident fifth wave, but remarkably prolonged latency. 3. In ten patients with pontine damages, only the first component was evident to clicks in the mainly affected side and the first three waves were recorded in the unaffected side. 4. In two patients with Wallenberg's syndrome, auditory brainstem responses were normal.
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