総説
内耳液と臨床との関係
牧本 一男
1
1京都大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.7-18
発行日 1979年1月20日
Published Date 1979/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208847
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1950年頃までの内耳液研究は概して基礎的研究としてのものであり,臨床との関連性を論ずるにおいてもなおへだたりがあつた。1960年台になると耳硬化症,メニエール病,聴神経腫瘍などの症例より,外リンパ試料を採取し,それについてNa,K,蛋白,各種酵素などの定量が行なわれるようになつた。最近の動向としては内耳疾患の治療に結びつくものとして外リンパ酸素張力の問題,内リンパ水腫の病因と治療に関係するものとして内耳液の産生率,浸透圧,液圧などの問題,内耳毒性物質の内耳液移行の問題,等々が研究課題となつてきており,内耳液研究が臨床との関連性の上で志向されるものが多くなつている。耳鼻科固有の領域を越える研究分野として注目されるのは,死後の内耳液化学組成を検索して法医学の実際で応用しようとする試みや,宇宙飛行時の酔を内耳液圧変動の分析より明らかにしようとする試みなどがある。以下,上にあげた各事項について,内耳液と臨床との関係を考察してみたい。
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