総説
内耳の構造
村上 嘉彦
1
1日本大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.257-270
発行日 1978年4月20日
Published Date 1978/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208636
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I.はじめに
内耳は聴覚ならびに平衡覚の2つの重要な感覚器官の機能を発揮するためのもつとも基本的な終末受容器を含んでおり.他の感覚器とともに生体活動を行なうための重要な情報を受理し,これを処理して中枢神経系に伝導させる器官であるが,その形態学的構成はかなり複雑で,組織発生学的にも高度に分化しているために,内耳は別名迷路(labyrinth)とも呼ばれているほどである。したがつてこの内耳あるいは迷路の構造の理解のためには平面的あるいは二次元的な図示の仕方ではかなりその全貌を把握することが難しい上,内耳を構成する各細胞成分もまた最近の電子顕微鏡をはじめとする観察手段の発展・進歩に伴つてきわめて微細なレベルにまで明らかにされてきているので,限られた紙数で内耳の構造のすべてを説明することはほとんど不可能に近い。
そこで本稿では,内耳の比較的巨視的全貌を中心にその三次元的構成の理解を助けるべくスケッチ・模式図などを用いてこれを述べ,次いで光顕レベルでの組織形態に言及して,それ以上の微細構造についてはとくに重要な感覚上皮に限つてその概略を述べるに止めることにしたい。
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