特集 良性腫瘍
基礎
腺腫
竹内 純
1
1名古屋保健衛生大学医学部病理学教室
pp.787-798
発行日 1977年10月20日
Published Date 1977/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208563
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腺腫adenomaは腺管上皮から発生する良性上皮性腫瘍で,間質結合組織の増殖を伴い,正常の腺組織に類似した組織構造を示す。肉眼的には結節状をなすことが多いが,粘膜の腺上皮から発生したものでは表面に突出してポリープ状,または乳頭状を呈するものが多い。質度は間質の多寡によりまちまちであるが,一般に腺様の軟らかさを有している。
組織学的には単純な腺管を形成する管状腺腫tubular adenomaと腺房状構造を形成する腺房状腺腫acinar adenoma,まるい濾胞状構造を形成する濾胞状腺腫follicular adenomaに分けられる。肉眼的に大きい嚢胞の形成をみとめる場合には嚢腫cystoma(嚢胞腺腫cystadenoma)として区別することがある。これは腺腫を構成している腺上皮細胞の分泌傾向が旺盛で,多量の分泌物が腺管内に貯留し,内腔が拡張して嚢状となつたものである。正常腺組織の腺腔や管腔内に分泌物が貯留して嚢状になつた嚢胞cyst(retention cyst,mucoceleなど)は真の腫瘍ではなく,上皮性腫瘍細胞の増殖によつて構成される?嚢(腺)腫とは,いうまでもなく本質的に異なつたものである。
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