特集 良性腫瘍
基礎
軟骨腫
吉村 義之
1
1横浜市立大学医学部病理学教室
pp.763-775
発行日 1977年10月20日
Published Date 1977/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208561
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I.軟骨の一般的性状
軟骨腫(chondroma)およびこれに類似する腫瘍を論ずるにあたり,正常軟骨の形態,機能について,少しばかり言及する事は無意味ではなく,むしろ必要と思われる。軟骨は特殊化された結合織であり,骨組織と一体となつたり,あるいは独立して,生体の支持,運動に重要な役割を演じている。たとえば可動関節では相対する軟骨は衝突に対する弾性を有し,また,関節面が滑る際,摩擦が最少限になるような構造を持つている。一方,気道,外耳のような管組織では柔軟ではあるが,抵抗力の強い骨組みとして分布し,管腔がつぶれるのを防いでいる,さらに,脊椎などにある程度の屈曲を与える形態を具えている。これらの働きに適応するため,構造上若干の差(硝子様,弾力性,線維性軟骨)はあるが,共通な所見は軟骨細胞,細胞外線維,ならびに不定形なgel様matrixが軟骨の構成要素である事,ついで,軟骨にはそれ自身を養う血管を持たず,また神経も無い事である。したがつて軟骨細胞の栄養は,gel様matrixから物質のしみこみによつて行なわれる。軟骨内に栄養血管が存在しないことは逆に言えば,軟骨の特殊な働きに都合の良い一面と考えられる。
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