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I.緒言
核医学分野において,将来を見通した場合,悪性腫瘍親和性放射性薬剤の開発はもつとも期待されている重要な課題である。このような放射性核種の追求による悪性腫瘍の陽性描画の試みは,これまでに数多くの研究者によつてなされてきた。それらは32Pをはじめとして,131I-antifibrin antibody,197Hg-chlormcrodrin,197HgCl2,131I-albumin,75Se-Selenomethionine,131I-fibrinogenなどであるが,必ずしも満足できる結果を得られなかつた。1969年EdwardsとHayesl)が67Ga-citrateを用いてHodgkin氏病の頸部リンパ節と甲状腺癌の肺転移病巣の陽性描画を報告して以来,良好な腫瘍集積性の故に,現在では67Gaが悪性腫瘍描出に繁用されている。しかしながら67Gaは炎症やSarcoidosisにも摂取され,腫瘍特異性に問題がある。その後,57Co-bleomycin,169Yb-citrate,99mTc-bleomycin,99mTc-tetracyclineなどの報告があるが,67Ga-citrateにまさるとは言い難い。一方,骨腫瘍に対しては,従来85Sr,87mSr,18Fなどが用いられていたが,1971年Subramanjanら2)によつて99mTc-Polyphosphateによる骨scintigraphyが発表されて以来,99mTc-pyrophosphate,EHDPなどの99mTc標識リン酸化合物が高い骨親和性,優れた物理的性質,そして調整の容易さなどから優れた骨scintigraphy用薬剤として日常の臨床に広範囲に利用されるに到つた。今回われわれは日常の診療で経験した頭頸部を中心とした悪性腫瘍における67Ga-citrateおよび99mTc-EHDPによるscintigramの症例を供覧し,臨床的意義について述べる。さらに,67Gaの腫瘍集積機序についても検討しているので併わせて記述する。
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