鏡下耳語
なぜ希望者が少ない?
小池 吉郎
1
1新潟大学
pp.132-133
発行日 1974年2月20日
Published Date 1974/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208030
- 有料閲覧
- 文献概要
最近,耳鼻科専攻を希望する医学部卒業生が特に少なくなつてきているという話を聞く様になつてから既に数年以上になる。耳鼻臨床の久保正雄先生の記載では,昭和47年度全国大学耳鼻科入局者が僅かに27名とか。
過日,この問題について,平衡神経学会の旧運営委員の方々と話しあつた事がある。恐らくこの27名という数字は誤りでもつと多く入局している筈であるというのが結論であつた。というのは,その時出席された方々の各大学の入局者数を数えると,どうも27名の数はまつたくあわない様であり,少なくとも50名以上はあるのではないかと思われる。この折,某先生が,東京の都議選で,共産党の赤旗の選挙ビラの中で,政府自民党の医療制度を批制し,最近,眼科,耳鼻科,小児科のいわゆるクラインの志願者が激減し,内科,一般外科などいわゆるグロースの志願者が,激増している原因として,現在の保健医療制度が,内科系優位の配分のため,収入の少ない眼科,耳鼻科,小児科などの希望者がなくなつてきた事が書いてあつた云々,という話が出た。新潟に帰つて,この話しを学生に話したら,赤旗にまで書かれる位であるから,先生,耳鼻科というのは,収入の少ない,いわば斜陽の科ですね。現代子はやはり,時勢に敏ですし,学生はやはり,経済第一を考えますから,耳鼻科に入る人は少なくなるのは当然でしようと,平然といわれ,今さらながら愕然とした。この事を本誌を通じて全国の耳鼻科医に奮起を促したいと一筆したためた次第である。
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.