特集 小児耳鼻咽喉科疾患
乳小児の麻酔
岩井 誠三
1
1神戸大学医学部麻酔科学教室
pp.785-792
発行日 1972年10月20日
Published Date 1972/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207840
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I.はじめに
麻酔学の進歩と普及が手術療法の適応拡大に大きな役割を演じてきたことは衆知の事実であり,とくに出生直後からの各種臓器機能における発育過程が理解され,年少児麻酔の安全性がたかまるにつれて,これら年齢層にたいしても積極的な手術療法が加えられるようになつてきた。
小児麻酔として実際に問題となる年齢は出生直後から6歳までの新生児・乳幼児であり,それぞれの年齢層において麻酔および患者管理上の特性を有している。すなわち,生後10日以内の新生児期においては母体から独立して外界への適応を行なつている時期であり,呼吸・循環・肝・腎などの重要機能はいずれも,それ以降の年齢層とは異なつた特異な状態を呈している。乳児期においては,外界への適応現象は一応完成されているが,予備能力に乏しく,何らかの負担がかけられた場合には容易に重大な障害を発生しうる危険をもつている。さらに幼児期になると,急激に精神的発育が進み,この時期に加えられた不安・恐怖・強い疼痛などの精神的打撃が児の正常な精神発育を障害すると報告されており1)2),精神愛護の重要性が強調される所以である。
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