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Ⅰ.緒言
耳硬化症は迷路骨包に生じる限局的な骨病変であり,組織学的には骨新生をともなう骨の増生で,豊富な血管腔と骨組織の排列の異様な乱れが特長である。たまたま病変がアブミ骨の輪状靱帯に達すると強直を起こし,特長的な伝音性難聴を生じる。発症は思春期前後がもつとも多く,30,40歳台になつて発病することもあり,多くは両側性である。
耳硬化症の発生頻度は人種による著差があり,白人に多く,東洋人にはもつとも少ない。したがつて欧米では外来を訪れる難聴者の大半は耳硬化症患者であるが,日本では比較的稀な疾患に属している。日本人耳硬化症の特長は欧米人に関する報告と比べて下記の通りである1)2)3)。
1.遺伝関係:欧米では50〜60%にみとめられているが,日本では10%以下である。しかし,滝沢ら4)は一地域に見出された耳硬化症6例を報告した。
2.性別:欧米では女性が半数を超えるが,日本では男子が多い。
このほか,発症年齢,聴力像,症状などは欧米のそれと著差はない。
欧米では豊富な症例を基にして耳硬化症の手術が開発され,いくつかの学派により多彩な発展を遂げてきたが,日本において両側耳硬化症は少ない疾患であるため手術治療も十分習熟することが難しいのが現状である。この報告は最近3年間に東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室において手術した耳硬化症15例について,その手術方法の変遷をたどりながら成績につきまとめたものである。
Fifteen cases of otosclerosis were given operative treatments, during the recent 3 years, at Tokyo University Hospital Clinic. Stapes mobilization was undertaken on 3 patients, while the other 12 were stapedectomized with insertion of Gelfoam wire prosthesis. Hearing improvements were seen 1 out of 3 in mobilization cases and 9 out of 12 in cases in whom stapedectomy was performed. The recent surgical procedures for treatment of otosclerosis, in this clinic, are stapedectomy under general anaesthesia and insertion of Schuknecht's stainless-steel Gelfoam wire prosthesis.
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