鏡下咡語
耳硬化症の手術ことはじめ
森満 保
1
1宮崎医科大学
pp.602-603
発行日 2000年8月20日
Published Date 2000/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902229
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耳硬化症の手術を初めて見たのは,1965年ハンブルグ大学附属エッペンドルフ病院に留学した時であった。ただし,主任のリンク教授は副鼻腔手術の大家で耳の手術はせず,その時の術者は後のハノーバー大学教授レンハルト講師であった。局麻の耳内法で顕微鏡下に苦労している様子がうかがえた。当時はTV装置はもちろん,側視鏡もなかったのでほとんど術野は見ることができなかった。術終了後に,手術台上の患者に囁語による聴力検査を行って,非常に改善されているのを確認し,得意そうに私にウインクして見せた彼の顔が印象深く今でも思い出される。一番若いF講師のアブミ骨手術は,時間はそれほどでもなかったが,術後に顔面神経麻痺をきたし,非常に落ち込んでいたのも記憶している。後上壁の削除をノミで行っていたがその時の事故と思われた。術式はシャンボーの綱線脂肪塊法であった。
次にアブミ骨手術を見たのは,1976年にシカゴでの第4回Schambough's International Workshopに突発性難聴ウログラフィン療法の招待講演に行った時であった。世界の第一人者といわれるシャンボー教授の手術はさすがに上手であった。先生は80歳になってもアブミ骨手術をしていると聞く。帰路にロスのハウス先生の手術も見学した。多い日には5〜6名のアブミ骨手術があるという羨ましい話であった。
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