薬剤
頭頸部腫瘍に対するBleomycinの臨床効果
野坂 保次
1
,
瀬戸口 篤
1
,
長田 憲二郎
1
,
福田 昭生
1
,
矢鳴 弘道
1
,
落合 洋一郎
1
,
原 良子
1
1熊本大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.973-982
発行日 1970年11月20日
Published Date 1970/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207567
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.緒言
頭頸部悪性腫瘍の治療は,手術的には頸部廓清術の開発,放射線療法ではテレコバルト,超高圧X線,リニアック,ベータートロンなどの導入によつて,成績の向上がみられている。しかしこれらの方法は,現時点ではおよそ限界に達した感がある。
一方,抗癌性化学療法は従来効果が少なく副作用が多いことから,手術および放射線療法の補助的役割を果たすに過ぎなかつた。すなわち手術不能症例における延命効果をねらう目的で,あるいは手術時癌細胞の流血内撒布防止の意味で,手術前後に用いられてきた。しかし癌の病因論的根拠から,最近では悪性腫瘍治療の本命はむしろ化学療法に求めるべきであるという見解が次第に強くなりつつある。このことは,制癌剤の動脈持続注射の開発と相俟つて,さらに有力になつている。この意味において,従前の制癌剤で危惧されていた白血球減少などの副作用がみられず,しかも従来の20余種の制癌剤にみられない効果を示すBleomycin(BLM)の登場は,癌治療に明るい光明を与えたものといえる。本剤は当初扁平上皮癌に特異的な効果を示すといわれたが,その後の研究によつて肉腫,線維腫,乳頭腫にも有効とする報告がみられ,さらにHodgkin病,悪性リンパ腫などにも応用され,その適応範囲はますます拡大されつつある。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.