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I.はじめに
悪性腫瘍の化学療法剤としては,ナイトロジェンマスタードがはじめて臨床にとりあげられて以来,各種の化学療法剤が次から次へと開発されてきたが,いずれも副作用の点で問題が残されており,ある種の癌を除いては,抗癌剤単独の応用で癌の根治を期待することは,まだほとんど不可能な現況にある。したがつて,現在の癌の化学療法では,その副作用の出現を最少限におさえて,しかも最大の治療効果を期待するため,投与方法がいろいろ工夫されつつある。すなわち,抗癌剤の多剤併用療法や大量間歇療法,あるいは局所動脈内注入法1)などの工夫がそれであるが,それでもなお放射線療法や手術療法などの併用が必要となる症例が絶対的に多い。私ども臨床医の理想としては,将来,臨床的にも安心して使用できる新しい強力な抗癌剤の開発が切に望まれるところである。
1962年,梅沢ら2)によつて開発された抗腫瘍性物質であるBleomycin(以下BLMと略記する)は,おもに腫瘍および正常細胞の両者の核酸代謝を阻害するもので,従来の抗癌剤と同じく,癌細胞に対してのみ選択的に作用するものではないが,それが皮膚,肺,淋巴系,腹膜などの特定組織には高濃度に集まるために,それらの部位の癌に対してはとくに効果的ではないかと考えられる。事実,耳鼻咽喉科領域においても,頭頸部悪性腫瘍のうら,分化のよい扁平上皮癌に対しては有効であるという報告3)4)もすでにいくつかある。
The authors employed bleomycin, a newly developed antineoplastic antibiotic, in treatment of 16 cases of malignant tumor of the head and neck region. The agent appeared to be effective in 75% of cases. And this effectivity was particularly marked in cases of malignancy of the oral cavity such as the tongue and the palate. Microscopically the agent appear to cause a gradual death of the tumor cells. The side-effects were manifested by anorexia, loss of hair, pyrexia and erythema but blood disturbances such as agranulocytosis were seldom met with.
This agent, when used against the epithelial cancer, appeared to be the most effective but, to attain a complete cure of the cancer by its use alone was met with a difficulty; other means should also be supplemented.
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