薬剤
メマイ症例(とくに脳幹障害例)に対するLucidril錠の使用経験
武藤 次郎
1
1東京逓信病院耳鼻咽喉科
pp.627-635
発行日 1970年8月20日
Published Date 1970/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207505
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Ⅰ.緒言
近時,神経耳科学の画期的な進歩に伴い,いわゆるメマイ症例の診断に当り,従来ともすれば末梢性障害と見なされていたものの中に,かなりの率で中枢性障害とくに脳幹障害が含まれていたことが判明してきた。最近とくに数を増してきた頭部外傷後遺症としてのメマイ症例では,その背景に脳幹障害を思わせる所見を認め得る場合が多く,また脳循環不全でも同様の愁訴,所見を有する患者が少なくない。したがつてこの種のメマイに対する治療方針の一つは,脳幹機能の回復ということに向けられるべきである。
最近開発された,大脳皮質,下垂体―視床下部,網様体に作用点を有し,神経細胞の代謝を促進するとされている神経調整剤(大脳賦活剤)Lucidrilp. クロルフェノキシ酢酸ジメチルアミノエチルエステル塩酸塩―はこれら頭部外傷後遺症や脳循環不全に基づくメマイに有効であるとの報告がみられる。
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