鏡下耳語
科学時代雑感
立木 孝
1
1岩手医科大学
pp.300-301
発行日 1970年4月20日
Published Date 1970/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207449
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今更アポロの月面着陸をひきあいに出すまでもなく,最近の科学の発展には驚嘆すべきものがある。わずか10年前にはまつたく夢でしかなかつたことが,今では白昼堂々と実現している。今でこそカラーテレビもまつたく庶民の生活にとけこみ,誰もがあたり前のこととして少しも不思議には思わないが,3,40年程前には,テレビジョンという言葉はまるで魔法の箱の代名詞のような印象で受け取られていたものであつた。
それらの,いわば文明の恩恵に,世界中の人々が一様に浴しているか否かには疑問もあるが,人間社会の生活が,おしなべて向上し,換言すれば贅沢になつてきつつあることは確かであろう。ことに昭和元禄といわれる現代日本の華やかな文明生活は,あの終戦前後の惨憺たる生活を思い出すことのできる人にとつては目もくらむ思いであろう。
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