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I.はじめに
補充現象が耳鼻科領域において発見されて以来,その現象を起こす責任部位について,臨床面から,あるいは実験的に多くの研究が報告されている。
聴覚の補充現象を命名したのはFowlerで1937年の論文によるとされている1)。臨床例の検討から,統計的に内耳性難聴者において補充現象が陽性になるものが多数認められる。そして,内耳疾患に特有と考えられ,後迷路性難聴との鑑別診断に利用されている。
他方,実験的面からの根拠としてDavis2)の研究が用いられている。すなわち,Davisによれば,外毛細胞は内毛細胞に比し,域値が低く,しかも抵抗性が弱いと報告している。このことを臨床に導入し,蝸牛の毛細胞障害の差によると考えられ,信じられてきた。しかし,これに反対する渡辺3)の実験がある。
前庭補充現象についてはAzziが1953年に初めてその存在を発表した。その後の研究から,補充現象を起こす部位として池田4)は半規管膨大部稜と考えており,さらに詳細については不明であるとしている。朴沢ら5)は半規管膨大部稜の二種の感覚細胞の受傷性の差6)からであろうと考えている。
最近,著者ら7)は味覚における補充現象の存在を発見した。そして,聴覚および前庭の補充現象と同様の考えでは説明が困難であることを知つた。
また,前庭補充現象についての実験でも感覚細胞の障害のみでは説明し難い結果を得た。そこでこれら三種の感覚における補充現象の責任部位に若干の考按を加え,一つの考えを持つに至つたので報告し,批判を仰ぎたい。
In auditory nerve tumors there are cases where recruitment phenomenon may become positive in the auditory, vestibular and gustatory functions.
With auditory nerve tumors disturbances may occur in the ciliated cells of the cochlear and vestibular organs due to disturbances in the inner ear blood supply. But changes noted in the gustatory reccruitment cannot be fully explained by this process. The only explanation might be some changes occuring in the synapsis of the corresponding nuclei of the nerves supplying the areas concerned.
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