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Ⅰ.緒言
近来放射線治療の広汎な適用は,われわれに数々の恩恵を与えてくれるが,一方それに伴う障害にも目をつぶる訳には行かない。特に照射後,長い潜伏期をもつて現われる放射線効果のうち,個体の生命をおびやかすものは発癌問題である。放射線が能率のよい発癌手段であることは人および実験動物で確かめられている。人の場合は,外部照射による皮膚癌および白血病,内部照射による肺癌および骨肉腫が問題になつている。従来放射線癌としては皮膚癌がもつとも頻繁に見られたのであるが,それは,管電圧が低く,皮膚表層における吸収が多いこと,X線管壁が薄く,Filterが無いかまたは薄いので,長い波長のX線が取り除かれないため皮膚障害が多いゆえであつた1)。しかし最近の放射線科学の進歩は高電圧高energyの放射線を作り出すことに成功し,各種の深在性悪性腫瘍を治療することができるようになつたが,一方このため深部臓器の放射線癌の発生が問題とされてきている。
われわれは12年前頸部結核性リンパ腺炎に対してX線治療を受けて発生したと思われる下咽頭癌の1例を経験したが,本例はまた著明な間質の反応性増殖を示し,一時は良性疾患あるいは肉腫と誤診された興味ある症例であるのでここに報告する。
A case of radiation cancer in a woman, aged 35, which appeared in the larynx presumably as the result of radiation therapy that was instituted 12 years previously for treatment of tuberculous cervical lymph glands, is reported. It is highly interesting to note in this case that the location of the malignancy was in the deep lying tissues reached by deep radiation therapy and the growth was pseudosarcomatous in character.
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