随筆
身体障害者の取り扱いについて
山崎 芳樹
1
1高知県立中央病院耳鼻咽喉科
pp.85-86
発行日 1967年1月20日
Published Date 1967/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203724
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われわれは近年身体障害者福祉法,労働者災害保障保険法,厚生年金保険法,国民年金法―傷害福祉年金などで聴覚,平衡機能,言語機能,咀嚼機能の障害程度について診断書の提出を求められる機会が多くなつて来た。検査にあたつてはそれぞれの法を検者自身が十分に理解していること,また被検者に同情したり,圧迫を感じたりせず先入感のない白紙の態度で診察,検査することが指摘されている。私は所轄官庁の依頼によつて書類を時々作成したり,国民年金の審査を頼まれておるのでさまざまの例を見聞きする。経済の高度成長に伴なう最近の目まぐるしい社会環境の変化は人間の性格をも変えてしまつているようである。何か歪を感じさせられる。最近高知県でも肢体,聴覚,視覚の各部門にわたる障害者で不正申請と考えられる申請書により重症(1級,2級)障害者手帖の交付を受けようとする者が多くなり問題となつて来た。これらは忙しい診察の最中に検査に訪れて来るので,つい被検者の一面のみしか取らえ得ていない結果が多いようである。詐病は検査にあたつた医師の力量を問われるだけでなく,社会的,経済的な問題を起す。経験の有る方には興味のない事柄であるが,多くの方々はあまり関心がないと思われるので私が最近経験した例を挙げて参考に供したい。
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