増刊号 現場で“パッ”と使える 免疫染色クイックガイド
3章 免疫染色に強くなる! 免疫染色の極意
DAB取り扱い
中村 広基
1
1西尾市民病院臨床検査室
pp.1050-1051
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207348
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免疫染色の発色は,安定性の高いDABが基本
■DAB
3,3’-ジアミノベンジジン(3,3’-diaminobenzidine:DAB)を用いた発色は,酸化還元酵素である西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase:HRP)によってDABが酸化・重合反応を起こし発色する機序を利用している.二次抗体に標識されたHRPがDAB試薬中の過酸化水素を分解し,生じた活性酸素がDABを酸化重合することにより茶褐色の沈殿が生じる1)(図1).二次抗体が結合した細胞の器官でこの沈殿が発生し,陽性部分が染着されることで対象となる抗原を検出する.染着したDABは,後の工程で用いられる水やアルコール類,キシレンなどの溶媒に耐性で,染色後標本も至適保存環境では長期間の保存が可能である.また,DAB試薬を構成するDAB液や過酸化水素液などの調整前の試薬液も冷蔵保存状態で比較的安定であり,染色試薬としては管理が簡単である.
このように,DABは安定な物質であり,免疫染色で用いるグレードは安価であるため,免疫染色の発色基質として多用されている(図2).しかし,DABは膀胱癌を引き起こすことが知られているベンジジンの誘導体であり,DAB自体も国際がん研究機関により発癌性を示す可能性が指摘されている危険な物質である2).そのため,使用や廃棄は慎重に扱う必要がある.
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