特集 形成と機能訓練
機能訓練
ろう教育における聴能訓練
十時 晃
1
1日本聾話学校
pp.1407-1414
発行日 1966年12月20日
Published Date 1966/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203706
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Ⅰ.はじめに
聴能訓練というのは,ろう者あるいは難聴者の聴く能力を訓練し,音の世界に適応して行けるようにすることであつて,難聴の程度や失官の時期によつて,その方法を異にする。ここでは,生来,あるいは生後まもなく,聴力に障害を持つた者の訓練について述べる。
ろう者に話を教えようという努力は,16世紀中期,ろう教育の先駆者たちの時代より既になされS. Heinickeにょって,1778年,口話主義のろう学校がザクセン候国,ライプチッヒに設立されてより約200年,またわが国においても50年近くの口話によるろう教育の歴史を持ち,この間,多くの努力がなされ,種々の手段が講ぜられて来たとは云え,普通の人と変りなく話ができると云うようには,なかなか行かない。従来のろう教育における口話法は,視覚によつて,相手の口の動きを見て話を理解する読話と,それをまねし,あるいは,発音の要領を視覚的に,あるいは触覚で振動や顎の動きを把え,発声と発音・発語を学び,自からの発する声や語については,胸・咽喉・鼻・頬などの振動や,筋肉運動によつてそれを感じ,あるいは鏡によつて口形を見,矯正を行なうと云う方法であり,音声や言語を聴覚により受容し,自からの声を聞くことにより矯正して行くと云う本来の音声言語とは形態を異にするため,音声言語の習得に限界の生ずることはやむを得ないことではある。
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