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欧文誌発行計画挫折す
西端 驥一
1
1慶応大学医学部
pp.1221-1224
発行日 1966年11月20日
Published Date 1966/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203694
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十年以上前から懸案になつていた欧文誌発行の問題が具体的に真剣に検討されたのは昭和37年であつたろうか。昭和医大で総会が開かれた時である。しかしそれまでも決して順調な経過をとつてはいなかつた。ここにこの難産児の姿がすでに現われていた。心ある人々から大きな期待を抱かれているこの児がどうしてこのように生れ難いのか。その原因を具体的に検討しておくことは将来のために絶対必要である。
欧文誌は日本耳鼻咽喉科学会で発行するのが本筋であると誰でもが思うが,その予算がないというのがもつとも大きな難関である。学会の会報がすでに評判がよくない。実地の臨床家はほとんど読んでいない。学位論文式のものが多くて,臨床に役立つものが少ないからである。この点は何回となく反復して論じられているし,会報編集委員がいつも苦心している点であるであるから今は触れない。会報自体が宿命的にそうであるからその上に欧文誌という一般会員が到底読みそうもないものを発行するために会費をあげるなどということは飛んでもないことだ。こんな子を生むなんて有り難くない。中絶してしまえというのが一般会員の感情であるまいか。しかも会報にとつては会員の研究を掲載するということが最大の任務であつて,外国に日本の研究を紹介することは現実として第2義的の問題になつている。欧文抄録があるのだがこれでは物足りない。ないよりはましだが,理想からは程遠い。
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