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Ⅰ.緒言
痛風はヨーロッパ諸国においてはすでにヒポクラテスの時代からあつたといわれているが,わが国においては明治31年近藤次繁氏が初めて報告して以来昭和10年までには,約20例にすぎなかつたのに,昭和37年御巫博士が511人の患者を報告している。最近4〜5年間に急速に増加した疾患の一つで,蛋白質代謝異常の疾患であり,東京を中心として大都市に集中していることは興味ある問題である。
今日まで日本では稀有の疾患であつた痛風が,なにゆえに急速に増加しつつあるのか,今日までの報告は主として内科,外科方面で報告されているが,痛風結節(Tophus)の好発部位が,耳朶,足の背面に多く,ついで肘,手,手指,膝,足首などに多く発生している現状から見て,われわれ耳鼻科医,とくに第一線診療に従事する開業医においても,単に耳痛といえば,外耳炎,あるいは三叉神経痛として片附けていた疾患の中にも案外このような疾患があつたのではないかと思われる。最近その一例に遭遇し,本症例は患者が医師であり,主訴の疼痛の現症も比較的よく把握され,耳結節も認めたので痛風と診断した。検査は開業医として学問的裏付けが不十分かも知れないが,痛風の初期症状である関節痛を伴わず,最初に耳痛,ついで耳介に痛風結節を発生した痛風の報告例が寡聞にして耳鼻科方面では知らないので,あえてここに報告し諸先輩方々の御教示を仰ぐしだいである。
A case of auricular tophus is reported. The patient is a man, aged 53, complained of a sudden onset of severe pain in the ear lobe. In the past gout has been a rare disease in this. country, but recently it appears to be no longer so.
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