家族性内耳性難聴の1症例

A FAMILIAL INNER EAR DEAFNESS

　Ⅰ．緒言

　家族性に難聴の現われるものには先天性聾唖，家族性内耳性難聴等がある。Fayが1898年に聾唖にも家族性に現われるものがあると報告したのを嚆失として，以後Mygind，Hammerschlag，Albrecht，Orth，本邦では愛甲，豊田，田中等により検討が加えられ注目を集めるに至つた。一方遺伝性内耳性難聴のうち，家族性に頻発するものに関しては1906年Manasseの発表があり，Hammerschlag，Albrecht，Undritz，本邦では山田，河田等により研究が行なわれ，以後数多くの発表がなされている。

　またこれ等疾患に他の変質性疾患，精神薄弱白痴，青色鞏膜，網膜色素変性症，魚鱗症，指過多症，白内障，口蓋裂等の合併せる場合もみとめられる。

　A case of familial deafness complicated by the presence of congenital cataract is reported. The family history of this patient revealed 21 persons of the immediate blood relatives to be affected with hearing disturbances. No abnormality was seen in the vestibular function or the sense of direction.