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Ⅰ.緒言
聴唖の定義は人により若干の相違があるがNadolecznyは「聴力や知能が正常であつて,かつ大脳病変が認められないにかかわらず3歳を過ぎても殆んどしやべれないもの」と定義している1)。もちろんこの定義をドイツとは民族的にも言語学的にも異るわが国にそのまま適用する事が妥当であるかは批判の余地があるが,いずれにせよこの様な厳格な定義に従つた聴唖はドイツはもとよりわが国においても甚だまれなものと思う。
ところで聴唖は通常「運動性」と「感覚性」に区別せられる。これらのうち感覚性聴唖はしばしば精神聾(Seelentaubheit)なる概念で置換されて扱われているが,従来のこの種の報告例については,われわれがすでに述べた如く2),末梢性難聴を有するものが大部分であつた様である。もつとも運動性聴唖についてもIsserlinは成人の運動性失語に対応するものとしているが3),実際には単なる言語発達遅滞verzögerte Sprachentwicklungから仮性球麻痺及び頬舌失行buccolinguale Apraxieに致る迄の一連の移行型がある4)といわれ,その概念にはいささかあいまいなところがあるものの,多くは英米でいう「発達性」ないし「先天性運動性失語」なるものに対応するものと思われる。著者等は過去4年近くにわたつて定形的とみなされる運動性聴唖の症例について言語発達経過を観察して来たが,従来わが国にはこの種の詳しい報告にとぼしいだけにいささか興味ある知見を得たのでここに報告し御批判をあおぎたい。なお本症例は言語発達が悪いために就学を1年延期し,本年小学校へ入学したが言語発達は依然として不満足な状態にある。
A marked disturbance of speech development was found in a girl aged 7. The child began to say for the first time "ta-ta" for calling her mother at the age 4. Although the development of speech comprehension appeared to be quite fair the speech development was markedly delayed and presented somewhat symptoms resembling those of motor aphasia manifested in adults.
However, in the pattern of development the progress of the speech did not differ much from that of the normal child, excepting that it was markedly delayed. The authors believe that the present case should be considered as that of high degree delay of speech development rather than being a developmental motor aphasia.
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