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2月23日から28日まで南米コロンビヤの首都ボゴタで開催されたパンアメリカン耳鼻咽喉科学会に出席した。
マイアミを朝9時に出発し途中カリブ海沿岸にあるコロンビヤの唯一の港バランキヤに立寄り4時過ぎボゴタについた。空港には学会のマークをつけた会員の方が出迎えに来て居り英語で「日本のDr. Yoshida」かと話しかけられた。税関には話してあるからと言つて凡ての入国手続も簡単で荷物は無検査のフリーパスであつた。又税関を出ると学会案内係のバッジをつけた若い美しいスペイン系の女の子に迎えられタクシーでホテルまで送つてくれた。外国旅行で一番煩らわしいのは入国手続と税関で二流国程ややこしく,言葉の不便と相まつて不愉快なものである。ボゴタでの第一印象は甚だよかつた。既に滝野博士は来て居られるとのことで方々を探したがわからない。日本大使館にも連絡したが来て居られることは確であるが宿がわからない。翌22日は登録をしたがここでも滝野,山本博士との連絡を頼んだが無駄だつた。止むなく,朝11時頃,ホテルを出てタクシーに乗ろうとして居つたところ,後から日本語で声をかける者がある。探して居た滝野博士である。然し2人とも山本教授との連絡は出来ず,翌23日朝始めて山本教授のホテルがわかり,私の室に集つて思い切り日本語でしやべることが出来た。山本教授は22日から宿に独りでくすぶつて居り私との連絡を計つてゐた由,誠に残念なことであつた。23日は3時から闘牛を見物し,その後6時からテケンダーマホテルの「赤い広間」で開会式があり,会員約700名で非常な盛会であつた。アルファベート順に各国代表の紹介があり,Japanの紹介の折我等3名起立した時は正に万雷の拍手で迎えられた。開会式後カクテルパーティがあり,我等3名は間もなく人気者となつた。オリンピックのことや,特に来年の国際耳鼻咽喉科学会が話題の中心となり,自分のところには何故案内状を送つてくれぬかと,各方面からおこごとを頂載した。24日は学会第1日であつたが,この日の夜は日本大使館に招待をうけた。聞けば各国代表は夫々の大使館に招待された様子で,学会の一夕を大使館招待日に当てたことはよい思いつきであつた。連日連夜招待にあつかつた。会長招待の時は少々人数が多かつたためか,クラブの様なところであつたが,その他は皆私宅に招かれた。御家族の方々の心をこめた歓待は実に嬉しかつた。又ある所では会員の歌に合わせて皆手をつなぎ,又前の人の肩に手をかけて輪を作つて室中をおどり歩くなど夜のふけるのも忘れてしまつた。ある夜など2つの御招待で11時頃伺つたところもある。学会用語は皆同時通訳されるのであるが,理解しにくい点もある。通訳者は専門外の人であるから出来れば事前に自分の講演原稿を渡して講演内容を予め説明しておいた方がよい。映画会場は別の室で行われたが,上映に先だち出題者に予め説明の時間を与えられ,又,上映後,質疑応答も出来た。上映映画の数にもよることであるがよい計画であつた。
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