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Ⅰ.緒言
アフタ性口内炎については,従来その報告例は比較的少なく,その発生原因については,あるいはビタミン欠乏,ホルモン失調,あるいは消化器傷害,全身疲労,ビールス感染等々,諸々の説がある。これに対する治療法も又これ等に従つて報告されているが,特別に有効なものは例えば副腎皮質ホルモンの如き一時的に有効なものを除いてはあまり存在しない様である。然しながらアフタ性口内炎の治療は,アフタそのものの一時的な小康を得ることが第一義的なものではなく,「習慣性に発生するのを阻止する」ことが窮極の目的である。然もこの様な習慣性発生の治療乃至予防については今日迄全くその記載を見ない状態である。
我々はここ10数年来鼻咽腔炎について,総合的な研究を続けて来たが,たまたま鼻咽腔炎にアフタ性口内炎を合併している患者の経過を観察していた所,鼻咽腔炎の消長とアフタ性口内炎発生との間に密接な関係が存在することを認めた。そこで更に鼻咽腔炎とアフタ性口内炎との間に因果関係があるのではないかとの想定の下に,アフタ性口内炎の患者について鼻咽腔炎の治療を主とし,アフタの治療を従としてその治療を続行し,長期に亘つて観察した所,良結果を得ることが出来た。即ち単に発生したアフタの経過についてその経過を短縮し得たばかりでなく,長期に亘る観察の結果アフタの習慣を根絶し得えたと考えられるか,或は少なくとも頻回のアフタ発生症例が数カ月乃至1年に亘りその発生を見ない程度にもたらすことの出来た症例を経験することが出来た。アフタ性口内炎の病像の明確な把握が困難な現在,この事は新しい知見であると考えられるので,これを報告する次第である。
That aphthous stomatitis is etiologically, closely connected to wax and wane of the inflammatory process within the epiphary-nx, particularly in the chronic recurrent in-termittent type, has long been suspected. In 19 cases of this type of aphthae severe epi-pharyngitis was found in 15. To these 15 ca-ses the treatment was directed to the epi-pharyngeal area alone; in 9 cases the aphthae abated without any further treatment to the lesion itself. Furthermore, in 7 cases of the latter 9 the oral lesion was completely cured.
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