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耳性化膿性髄膜炎(1治験例)とホスタサイクリンの髄液内移行度について
深町 正陽
1
,
牛島 申太郎
1
,
古市 暢夫
1
,
野中 康弘
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科教室
pp.527-537
発行日 1961年6月20日
Published Date 1961/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202690
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I.緒言
化膿性髄膜炎の治療に当り,広い抗菌スペクトルと卓越した抗菌効果を有するテトラサイクリン属の重要性は多くの臨床医家の認める処である。殊に最近の如くペニシリン或はサルファ剤耐性菌の感染が増加し,その治療面に多くの困難をもたらした現状に於てその抗菌作用の利点が注目をあびて来ている。然し乍ら従来用いられて来た経口投与法或は静脈内投与法にはその副作用,即ち胃腸障害や小腸結腸炎,或は血栓性静脈炎の如き危険があり,又治療上,血中濃度の維持が時として困難であり,殊に血液髄液関門の為に髄液内への移行濃度は低く,この為抗生物質の併用療法に於ける実験成績にも明かな如くPcとの併用に於て逆に相殺作用を起し,かえって治療効果を減退せしめる様な結果を起す危険があつた。治療上のかかる欠点は従来のテトラサイクリン剤が水に難溶性であることが一つの大きな原因であつた。この欠点を除去する目的から登場した新静注用テトラサイクリン剤,即ちピロリジノ・メチル・テトラサイクリン〈ホスタサイクリン〉(ヘキスト社製)(独名レベリン)は勝れた溶解性に加えて血中有効濃度が極めて長時間維持し得るという利点を認められ,既に1950年代の初期から注目されてきた薬剤であったが,最近我々は「ホスタサイクリン」(以下「ホサ」と略称する)耳性化膿性髄膜炎の治療に広用し認むべき効果を収め得たと同時に,従来人体に於て測定されていなかつた髄液内移行度を測定し得たので,此処に報告し参考に供する次第である。
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