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I.緒言
一般に鼻腔内異物は,小児に多く成人では精神病者以外はきわめてまれとされているが,最近われわれは外傷性鼻腔内異物としてきわめて特異な発生と経過を示した一症例を経験したのでこれを報告し,異物報告諸症例に追加すると共にいささか文献的考察を加えたいと思う。
本症例のごとき,災害ないしは戦傷等による鼻腔内異物,すなわち外傷性異物は,成人でも必らずしもまれなものではないが,本症例は作業中に爆発した熔融アルミニウムが鼻腔内に飛散して凝固した結果,大きな鼻腔内異物を形成したという点からみて,その発生および経過がはなはだ特異であるばかりでなく,その異物が巨大なために,前鼻孔,後鼻孔のいずれも経由して摘出し得ず,手術的に梨子状孔よりこれを摘出することができた症例である。
A burn in the nasal cavity occurred in a patient who worked in an aluminum factory by a drop of molten metal when the factory had an explosion. The metal cooled after lodging in the nasal mucous membrane to form a foreign body. Aside from the nose the patient was effected by a general bodily burn and during the progress of this affec-tion it was complicated by tetanus infection.
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