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慢性中耳炎に対するロイコマイシンの局所使用の検討
藤森 暢路
1
,
五十嵐 真
1
,
五十嵐 篤男
1
,
天谷 秀夫
1
,
中川 透
1
,
増田 隆正
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.47-50
発行日 1960年1月20日
Published Date 1960/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202375
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慢性化した中耳の炎症に対して,全身的に化学療法を行つても,中耳の分泌物への抗生物質の移行度は極めて低い。病原菌を陶汰する事を第一の目的として化学療法が有われる以上,充分な単位の抗生物質を一挙に局所に到達せしめる事が必要である。しかし慢性化膿症に化学療法が奏効し難い理由はこれだけではなく,局所の病理組織学的な変化が,どの程度であるかに依つても支配されうる事も考えねばならない。他方細菌学的な面から見ても,局所に達する量と細菌の耐性との関係ばかりでなく,抗生物質の作用を受け容れる細菌の動態と抗生物質の作用機転(Mode of Action)の関係も見落されてはならない。斯くの如く慢性化膿症に対する化学療法の適用は,理論的には局所投与を良しとするが,それでも上述の如き制約は免がれえないものである。
然しながら実際臨床に於いては,すべての中耳化膿症を手術的に治療しようとしても,その適応は極く一部に限られる。そこには聴力保存の問題(現在では鼓室成形術が日を追うて進歩してきているが),その他の社会的制約から患者が手術を拒否する場合が決して少くない。そのような場合に姑息的な手段ではあるが局所化学療法が大きな役割を果たす事になる。
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