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Xylocaine(新局所麻酔剤)の耳鼻咽喉科的応用に就て
今井 三郎
1
,
宇野 昭二
1
1東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科教室
pp.58-62
発行日 1956年1月20日
Published Date 1956/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201488
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Ⅰ.緒言
従来耳鼻咽喉科領域の手術に於ては,他科に比して扱う範囲が呼吸道乃至は脳神経と密接に関連する為に,手術時の麻酔が充分行い得ない憾みがあつた。近時種々の麻酔剤乃至は装置の研究発達に伴い,それらの耳鼻科界に於ける進出も目覚ましいものがあるが,少くとも全身麻酔の分野に於ては,それが実施には多数の人員と設備を要し,更には多少なりとも危険を伴う事も考慮しなければならない為に,辺縁の僻地に於ては今尚容易に之を応用する段階に至つていない様に思われる。従つて現在の段階に於ては,可及的に患者の苦痛を除き得,危険も少く且安直に使用し得る新局所麻酔剤の出現が,我々にとつては最も望ましい所である。
現今では耳鼻科界のみならず,一般に局所特に浸潤麻酔剤としては最も広くProcaineが使用され,又特に不便を感じない程に効果を挙げている事は周知の事実であるが,尚麻酔持続時間が短く,且不安定であるという欠点を有している。Swedenに於ける麻酔学の権威,Jorsten Goldhの見解に従えば,局所的麻酔剤に課せられた典型的な要求は次の如くである。即ち,1)毒性の少いこと。2)組織を刺戟しないこと。3)水に易溶で安定であること。4)滅菌操作に堪え得ること。5)Adrenalineとの併用が可能であること。6)麻酔持続時間の長いこと。そしてGoldh,Goldberg等は,之等の要求を充分満たすものとしてXylocaineを推賞している。
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