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Ⅰ.緒言
1936年Edmond Prince FowlerがRecruitment測定法として所謂フアウラー氏法,即ちalternate binaural loudness balance testを発表して以来,Recruitmentの有無は,聴覚障碍に於ける一つの大きな特長として常に重大視されるようになつた。特に1948年Dix,Hallpike and Hoodが,第8脳神経の障碍による難聴は,Recruitmentを欠くものと発表して以来,Recruitmentの測定は,感音器性難聴の細別診断という意味に於て益々その重要性を増し,相次いで新らしいRecruitmentの測定法が考按され,発表された。そもそもフアウラー氏法は,近年Bangs and Mullinsが批判した如く,最も確実性のあるRecruitment測定法ではあるが,然し乍ら唯一の,そして最大の欠点としてその適用は一側性の疾患に限られる。即ちフアウラー氏法の施行には,元来対称となる正常耳を要するのであつて,この欠点は,臨床上の応用に際しては正に致命的と云わねばならない。何となれば,我々が接する多くの聴覚障碍者,殊にRecruitment測定の対称となり易い感音器性の疾患は,屡々両側性に出現する故である。従つてその後に発表された数多くのRecruitment測定法は,先づ第一に,この欠点を補足せんがためであつた。即ち,単耳に於けるバランス法,(monoaural bifrequency loudness balance),Békesy,Lüscher等によつて開拓されたDifference Limenの測定,或はmonoaural masking method,most comfortable or uncomfortable loudness test等である。然し乍らこれらの方法も,一側のみで施行し得るという点に於ては確実にフアウラー氏法の及び難い長所を有していながら,他方それぞれに幾多の短所を示し,結果の確実性という点に関しては,むしろ原法であり,そして最も単純であるフアウラー氏法に及び得ない現状である。従つて我々は聴覚障碍の種類(特にオーヂオグラム聴力型の別)によつて用うる方法を選ばねばならないし,又或る場合にはいくつかの方法を併用しなければならない。しかもその判定に際しては,その長所と短所とを把握している必要がある。
著者は,これらの点に於て各種Recruitment測定法に検討を加える目的を以て,先づフアウラー氏法に若干の考察を行つて見た。
大方の御批判を得れば幸である。
Tsuiki states that,as a test for determination of recruitment,Fowler's test which concerns with obtaining alternate binaural loudness balance is highly efficient. Such a conclusion is derived from application of the test to various diseased ears and the results of other fundamental studies. Further applications and interpretation of the test are discussed.
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