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Ⅰ.諸言 聴覚には方向知覚の能力があるものとされている。即ち我々は音源の方向を聴覚によつて認知することが出来るのである。然らば我々はその作用を聴覚のどの部分で,又如何なる機構で行うのであろうか。古くから多数の先人はそのことに関して多数の実験を行い,諸種の論説を発表したが,近年北川氏等が批判した如く,それらの間には多くの矛盾が介在し,明確な解明を我々にあたえてくれない。一体何故にこの様な矛盾が生ずるのであろうか。一つ一つの実験はそれぞれ独立した意味を持ち,確実な実験成績として方向知聴解明の資料となり得る筈であるのに,これらを一貫してまとまつた結果が出て来ないのは如何なる理由によるのであろうか。
思うに我々が日常行つている聴覚による方向の判断乃至は鑑別には,無数の多種の要因が加わつているのであつて,純粋に聴覚のみによる方向定位がその中のどれ程の部分を占めているかを判定することは決して容易なことではない。即ち多くの中枢性及び未梢感覚性の要素が不知不識の間に多大なる,そしてむしろ優位な立ち場で影響をあたえているからである。例えばYoungの実験は視覚の影響が全く聴覚による方向感を無視せしめることを示している。
TSUIKI and KOZEKI find that, when hearing alone is depended upon for determination of the direction from whence the sound may ari-se, the results are poor. The tests are con-ducted in a sound-proof room. The authors call attention to make note of this fact when evaluating tests that are commonly performed under ordinary conditions for sound localiza-tion.
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