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抑欝感に関する心理学的考察
小出 れい子
1
,
小田 晋
2
,
冨士原 光洋
3
,
河合 美子
4
,
佐藤 親次
2
1明星大学通信教育部
2筑波大学社会医学系精神衛生
3駒沢女子大学人文学部国際文化学科
4日本福祉教育専門学校
pp.434-438
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901504
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抑欝状態は,正常範囲の抑欝から神経症・精神病に生じる抑欝まで広範囲に観察される状態であり,公衆衛生の基本的課題の一つである.抑欝状態については,既に膨大な研究がなされ,心理テストを用いた報告も多い(Lorn1))が,これらの心理学的研究の多くは,抑欝状態の行動の記述と査定ないしは抑欝尺度と抑欝状態の誘因となる外的事象との対応の検討に終始し,抑欝状態が発展しやすい個人内部の弱さ,脆弱性に見られる個人差が検討されることは,ほとんどなかった.(BrownとHarris2),Bebbington3)らは,認知論的アプローチの中で抑欝モデルの一部として脆弱性にふれているが,この考え方は,その後発展的に検討されることなく終わっている.)すなわち,なぜある事象(例えば,失恋,離婚,倒産など)が,ある人には深刻な抑欝状態を引き起こし,ある人にはさほど問題とならないかが,個人の内部における抑欝状態の発展を可能にする心理的体制の相違として問題にされることはなかった.本論ではこのような抑欝状態を引き出す心理的体制を抑欝準備性(readiness)としてとりあげ,検討する.抑欝準備性とは,何らかの(機能,対象,その他の)喪失への危惧,心配,過剰な関心を潜伏させた心理的状態であり,これらの危惧,心配,過剰な関心が,何らかのきっかけを得て抑欝状態を引き起こすと考える.
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