三叉神経痛に対するダンデイ氏頭蓋内切断手術の1経過

　最近我国に於ても安楽死と言う問題を人道上の問題として取り上げる様になつて来た。薄暗い病室で，苦痛の為に憮悴した青白い顏の患者が，睡眠不足に陥つた虚な眼差で救を求めている。此の様な光景に接しては誰しも心を動されずにはいられないであろう。現代の医学が癌の猛威に対しては，たとえ之を征服することが出来ぬとしても，せめて之による苦痛からだけでも患者を解放し，将に消え去らんとする生命の安らかな昇天を見守ることは許されぬであろうか。最近偶々，上顎癌が頭蓋内に転移し，為に劇甚な神経痛を訴え，日夜呻吟する一患者にDandyの三叉神経頭蓋内切断術を施行して，良結果を得たので茲に報告する。