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Deviatomieは鼻内手術の基本的なものであつて,纖細なる手技を要するために,耳鼻の手術を始めるものが最も苦心をする手術である。併しこの手術もその要點をよく理解してしまうと,その手技も安易になり,其の結果も確實であるから,遂には耳鼻の手術のうちでは最も好ましい手術となるのである。初めこの手術を非常に難しく感じさせたものは,手術野の窮屈なことゝ,粘膜が薄くて穿孔しさうなことゝであるが,又Killian以來の外人の手術法やその器械を,そのまゝ,日本人の狹い鼻腔に用いようとしたところにもあると思う。この間に生ずる矛盾や不合理な手技も,目本人の器用さに對する自負心によつてか,又は修練の不足と自認する謙虚さとによつてか,案外に批判されること尠く,半ば習慣的に受繼がれていたのではないかと思う。勿論,個々の手技や器械に就ては笹木教授の鉤,近くは高橋助教授等をはじめとして改變の報告されたものも尠くなく,又報告されることなくとも,夫々の術者により考案された優れた術式の存在することも推測に難くないが,成書による從來の術式が尚廣く浸透し,この手術を始める者に難しい手術の如く感ぜられているが如くに思われるので,著者はは私見を述べることにした。
鼻中隔の彎曲症のある際に,この手術が通氣状態の調整に適切且つ確實な手術であることは論をまたないが,共に下甲介の肥大が存在する際にもこの手術のみによつて機能の回復が見られるので多くの場合に下甲介切除術は不要である。下甲介の腫脹は鼻中隔の彎曲が矯正せられると自然に縮小するからである。著者の臨床ではConchotomieを行う例は年間數例に過ぎない。又例へ鼻中隔の彎曲は認められなくても,下甲介の肥大による鼻閉塞の治療のためには先づDeviatomieを行うことにしている。
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