特集 扁桃摘出の病理と手術
扁桃全摘の自家臨床
山本 常市
1
1昭和醫科大學
pp.775-776
発行日 1953年11月30日
Published Date 1953/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201019
- 有料閲覧
- 文献概要
私の扁桃全摘の方法はまことに平凡で教室に居る時分恩師や先輩から教わつた術式を30餘年の間少しも改良もせずそのまゝ施行している次第である。
まず手術の準備として,出來れば2, 3日入院せしめるが近頃は病室や色々の關係で外來ですることが多い。空腹時に手術するようにする。午前中にする時は朝食を,午後にする時は晝食を與えないようにする。胃に内容物がある時は手術の際しばしば嘔吐をして手術部位を不潔にする恐れがある。手術前にはよく含嗽させて口腔や咽頭を清淨ならしめる。又出血の豫防として臓器製止血劑トロンボゲン(0.5)などを内服せしめる。(手術の禁忌症として,扁桃の急性炎症があつて體温が37゜以上ある時,衰弱のある患者,出血性素質あるもの,女子月經時等とあげる)。麻醉は局所麻醉を用いる。先ず10〜20%コカイン液を兩側の前後口蓋弓,咽頭後壁,鼻咽腔等に塗布する(私は兩側口蓋扁桃を同時に手術する。又アデノイドがある場合はこれも同時に手術する)。次に5000倍アドレナリン液を同樣に塗布する。次に約5〜10分ののち浸潤麻醉として1%プロカイン液10ccに1000倍アドレナリン液2, 3滴の割合に混じたものを1側に注射する。注射する部位は前口蓋弓の上・中・下部と,後口蓋弓上部で先ず一方の前口蓋弓の中央部に注射し,次に下部,上部に及ぶ。それから下部にもう一度注射する。この部位は,絞斷の際最も疼痛を感ずる場所である。それから後口蓋弓の上部に注射する。たゞし高度の肥大の時は後口蓋弓が見えない場合がある。かゝる場合には前口蓋弓の上部からやゝ深く注射する。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.