特集 耳鼻咽喉科診療の経験と批判
扁桃摘出術
山本 常市
1
1昭和大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.821-825
発行日 1970年10月20日
Published Date 1970/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207541
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Ⅰ.はじめに
扁桃摘出術は人により多少のちがいはあるが根本的にはたいした差はない。ただ使用する器械の内鉗子,剥離子などにはいろいろとちがつたものを用いていてそれぞれ最善のものと信じているのであるからこれをとやかく批判することはなかなかむづかしい。それよりもわれわれはどういうようにしているかを述べて諸君の批判にまつことも無意味ではないと思う。もちろん多少の意見を述べることはやむを得ない。
口蓋扁桃は前後口蓋弓より構成された扁桃洞内に介在する。前口蓋弓は口蓋舌筋よりなり,後口蓋弓は口蓋咽頭筋よりなつているがこの筋から扁桃中央三分の一と下三分の一の間または扁桃の中央部の組織内に筋帯(扁桃咽頭筋)が付着している。小児においてはこの筋帯は弱く大人では強くかたい。摘出の際この筋帯の抵抗を感ずる場合がある。
この外扁桃上極に扁桃口蓋筋という筋帯があるがこれは常に存在するものではなく,しばしば欠如している。
後口蓋弓は喉頭蓋を挙上する作用にあづかつているので強く損傷する時は発声に影響を及ぼすことがある。
扁桃摘出はカプセル外摘出である。すなわちカプセルを付けたまま扁摘するのである。
扁桃の血管は上極より2本,下極より3本はいつている。また扁桃の神経は下極より入つている。これらの解剖学的事実も扁摘の際,念頭におくべきである。
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