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ゴオゴリの鼻
K
pp.436
発行日 1953年9月20日
Published Date 1953/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200964
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芥川龍之介の出世作の「今昔物語」から思いついた「鼻」であるが,ゴオゴリにも亦「鼻」という小説がある。しかもこの鼻たるや,朝饗の麺麭の中から現われるのを振出しに,鼻自身が金ビカ模樣の礼服を着て,馬車に乘つて歩いているというんだから,奇想天外である。たかだかと禪智内供の顏に細長い腸詰のように,ぶら下つている鼻の比ではない。
鼻はついに旅行中に逮補されて持主の手に還つて来るが,どうしても,もとのようにつかない。大いに困惑していると,或る朝眼をさました時に,鼻がちやんと元の座にいることを発見した。こゝのところは,ちよつと禪智内供の鼻が復旧するのと似ていないこともない。
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