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I軟骨突起に就て
鼻中隔の支柱組織は云ふ迄もなく骨組織と軟骨組織とから成り立つているが,人の鼻中隔の多数に就て其の軟骨組織の骨組織に対する在り方を観察すると2つに区分し得られる。即ち其の1つは従来から成書にも広く記載されている方形軟骨蝶形骨突起Processus sphenoidalis septi cartilagineiで他は方形軟骨鋤骨突起Processus vomaeds septi cartilagineiである。後者の鋤骨突起に就ては解剖学的には既に1892年Zuckerkandlによつて鋤骨軟骨及び其れを容れる骨性鋤骨管として,又中村(為)(1930)は之を鋤骨突起と命名し,より詳しく其の存在が解剖学的に指摘されているけれども従来の成書文献には今以つて前者の蝶形骨突起だけが記載されているのみである。所で1938年頃私が鼻中隔矯正手術で摘出した骨軟骨片の乾燥したものを何気なく観察してる際,従来の蝶形骨突起の在り方とは考へ難い所見を見出したので多数例の摘出骨軟骨片に就て検討した所,上記の解剖学的にのみ知られている鋤骨突起の存在を知り而も従来の蝶形骨突起の発顕頻度が鋤骨突起の頻度より遙に低いと云ふ事を知つたのであるが,尚大切な事はこの鋤骨突起の臨床的意義が実に大であると云ふ事であつた。而してこの事実は晒骨に於ても又組織学的追求からも裏書されたのであつて,之等の成績に就ては既に報告してあるが記述の順序としてこの両軟骨突起と鼻中隔畸形との関係を簡記する
一般と鋤骨突起の長いものは畸形特に突起(櫛及び棘)が少く,女性に多く,発育途上の期間に在るものが多いが,短いものは突起の発顕が顕著で男子に多く且高年になるに従つて短縮し,之に随伴して畸形が著しくなる。而して畸形の高度となるに従い,トルコ鞍角(α)は大となり,鼻脊頭蓋底(β)角は大となるのを認めた。鋤骨突起が非常に短くなると一見蝶形骨突起の短いものと相似となる事もあるが一般に蝶形骨突起の長いもの(成書の図によく引用してある)は非常に稀なものの樣で私の検索した範囲では長いものは1例も認めなかつた。この事はZuckerkandlによる人の鋤骨突起の発生から考へても了解し得る所である。鋤骨突起の長い際にはこの軟骨が鋤骨内に埋れて骨性の管(鋤骨管)の中に埋れている観を呈するが短くなるに従つて,其のどちかの骨壁は菲茨乃至欠損するに至り軟骨は骨管(主に其の下端)と共に突出して所謂突起を発顕する。
TAKAHASHI finds in man two separate origin of processes that cause protuberances of nasal septum. The first of these is the Well known processus sphenoidalis septi cartilaginae and the other is processus vomeris cartilaginae.
In clinical teachings, however, mention is made of the former alone while the latter is practically disregarded. Butin study of nasal septi a large majority of casesare met with with development of processus vbmeris and that of processus sphenoidalis are very few indeed. In corn parative anatomy, it isfound that man aloneis provided with processusvomeris which is conspi cuous by its absence inothervertebrates; the septal deformity that involvesthe processus vomer is might be considered as an affection human in type and those thatwhich involve the pocessus sphenoidalis maybe regarded as animal.
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