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雑感—学会の討論に就いて
西端 驥一
1
1慶大医学部
pp.44
発行日 1952年1月20日
Published Date 1952/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200606
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学会の討論の適否は聽く方にそれだけの判断力がないと本当の処が判らないものである.昔の事であるが鳩の迷路反射に就いて私が発表した処が亡くなつた深浦文雄氏が「鳩を手で支えて廻転したり,傾斜させたのでは方法が粗雑であるからいかぬ」とけなしたう.つかり聽くと深浦氏の討論で私の研究は全くなつていないように思える.此処に重要な問題がある.科学者としてはこの問題を掘り下げて考えておく必要がある.
鳩の眼震数を精密に計測するような場合は深浦氏のように廻転台に固定し,半規管の位置を精確にし,廻転運動を正しくさせなければいかぬであろう.併し鳩の翼や脚に現われるgrobな迷路反射を観察するには方法がgrobで一向差し支えない.その代り視性反射や,脊髄後根反射を除外する事に鋭い注意を払うべきであるので.深浦氏は船醉と迷路との関係を研究するので迷路刺戟を物理学的に精密にやつていたからその点にばかり頭腦が働いていてもつと広い立場から考える余裕がなかつたのである.即ち自分の狹い立場に捉われていたのである.迷路反射の研究を盛んにやつていたGroebboelsがその後間もなく私と同じ方法で同じような成績を発表していた.
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