臨床講義
耳鼻咽喉科領域の出血に対する外頸動脈並総頸動脈の結紮に就て
高原 滋夫
1
,
佐藤 寬
1
1岡山大学
pp.247-252
発行日 1951年6月20日
Published Date 1951/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200510
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我々耳鼻咽喉科領域の手術は,その手術野が血管に富んでいて容易に出血し易く,且又解剖関係からその止血が仲々困難であると言う点が1つの特徴である.例えば鼻腔,副鼻腔,乳樣洞の手術.の如きは何れも手術野が密接に骨に囲まれていで,その軟部組織が薄い為に出血点を止血鉗子で掴む事が不可能なので,所詮我々は之に対し極めて原始的な方法ではあるがガーゼによる圧迫タンポンの方法をとつたり,又特に骨出血に対しては骨蝋を用いて之に対処している.又口腔,咽頭,鼻腔の手術に於ては反射鏡応用の下に深部に集光し出血点を長柄の鉗子で掴み之を結紮するか,ガーゼによる圧迫止血をはかつているが,之とてもその操作にあたつて咽頭反射が頻発し術者も患者も共に困難を感する事が尠くない.
この樣に耳鼻咽喉科領域の手術は一に出血との闘争であると言つても過言ではない程であつて夫が他科領域め手術と趣を異にする所であるが,幸な事に多量の出血を見ても多くの場合前述の方法によつて所期の目的に到達するのが普通である.然し稀には常套方法を以てしては止血を齎し得ない場合も存するのであつて本日は耳鼻咽喉科領域の出血に対する最後的止血の方法に就て少しく話を進めてみたい.
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