診療室
スポンゼルの使用經驗
村山 文子
1
1内野病院
pp.268-269
発行日 1952年6月10日
Published Date 1952/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200636
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例えば,子宮附屬器癒着剥離,子宮外妊娠の手術,或は,擴汎性子宮全剔出術等の場合,組織出血が滲み出るのは,なかなか厭なものである。從來何がよい止血法はないかと渇望して來たが,この年來の希望を難なく解決してくれたのが,被吸收性物質スポンゼルの發賣である。早速使用してみて,優秀な止血効果があることが分つた。現在迄の症例から觀て,毛細血管よりの滲出性組織出血に封しては,極めて有効,必要不可缺常備剤として,推せんしたいが,その他の出血に對しては,その効果を一途に頼るのは危險であるという結論を得た。元來被吸収性物質はIngraham,Bailey (1944)が人血漿を分溜してFibrin foamと稱する海綿様物質を作つたがその後Bering (1944)はゼラチンを主要成分とする別の海綿様物質を作りFibrin foamと同様な効力があることを發表し漸次各方面の研究報告により止血効果の著明なことが分明した。スポンゼルは,山之内製藥會社より發賣せられているゼラチンスポンヂの,被吸收性物質で白色無臭多孔性の滅菌濟みの物質である。
使用法としては,出血程度により,スポンゼルの大さを加減し,出血面に壓迫粘着すればよい。若し腹腔内にペニシリン等の注入を行う場合には先づ壓迫し,充分粘着した後に注入しなければ,屡々注入により縮小,剥脱するから注意すべきである。
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