論説
有生異物性中耳炎の1症例— 蛔蟲
小原 馬太郞
1
1岩手醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.109-110
発行日 1948年6月1日
Published Date 1948/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200070
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緒言
蛔虫に依つて、榮養障碍及び中毒症状を起すのみならず、種々の複雜な症状を起して、診斷を困難ならしめて居る例は、屡々見聞する事實であるが、耳鼻咽喉科領域に於ても、蛔虫が鼻から這ひ出したり、又中耳に迷入して中耳炎を起す場合がある。中耳に異物の侵入する門戸は2つあつて、1つは外聽道より鼓膜を破り、或は既に存在せる穿孔より侵入するものであり、他の1つは、耳管咽頭口より、耳管を經由して入るものである。この中で前者に依る場合が甚だ多いのに比べれば、後者による場合は比較的稀である。
余は、急性化膿性中耳炎の像を呈して居た3歳の男子より、鼓膜切開に依つて蛔虫を發見し、摘出し得たる症例に遭遇したので、先人の例に追加報告する。
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