論説
慢性鼓室上窩化膿の病理より其の手術々式の撰擇に及ぶ
磯野 節
1
1新潟醫大耳鼻科教室
pp.2-4
発行日 1948年4月1日
Published Date 1948/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200039
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鳥居教授は中耳炎の分類に於てその急性たると慢性たるを問はず,總て之を鼓室型と鼓室上窩型とに分けることが,治療方針の決定に,又豫後の判定に役立つ事を強調し,臨床上,前者を良性,後者を惡性と呼んでゐる。蓋し前者は保存的療法のみに依て治癒に導き得るに反し,後者は觀血的操作に俟たなければ治癒し得ないものが多いからである。其の有力な根據となる業績としては,曩に我が教室の齋藤虎二氏による「慢性鼓室上窩化膿の病理より其の手術々式の撰擇に及ぶ」と題する二回の報告がある。(耳鼻臨床21卷1號706昭和2年9月,同29卷3號448昭和9年10月)。
同氏の論文に依ると,臨床上慢性鼓室上窩炎と診斷せられたもののうちその炎性變化が眞に鼓室上窩,或は之とアントルムのみに限局しておるものは,全數の1/3位にしか過ぎない。而じて殘る2/3では炎症が既に乳樣突起の全般に擴大しており,而かも其の中の1/3では骨質の破壞,硬腦膜の露出など相當高度の變化を呈していたという。
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