Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
ブドウ球菌(ブ菌)は所謂皮膚常在菌として最も屡々膿皮症の原因となるが,その際膿皮症周辺部に湿疹様変化が合併する場合が往々認められる。他方原発性湿疹病巣部に二次的に感染したブ菌は,その湿疹病変の遷延悪化のみならずいわゆる病巣抗原として働き他の体部に撒布性湿疹病巣を生ずる可能性も考えられている。Rajkaがその著Das mikrobielle Ekzemの中に記す所によると,細菌感染を細菌が生体に生ずる反応形式によつてprimäre toxische Infektion,primäre sensibilisierende(allergisierende)Infektion,及びtoxische und zugleich sensibilisierende(allergisierende)Infektionの三つの型に分ける考えもあり(Leider 1955),この際ブ菌はチフス菌,連鎖球菌(連菌)と共にtoxische und zugleich sensibilisierende Infektionの型をとることが多いとされている1)。
この考えによると,上記化膿巣周辺部の湿疹様変化や原発湿疹巣からの二次撒布病巣の成立機転は,ブ菌毒素や破壊された菌体成分或はこれら細菌性物質と組織成分が合併した創傷分泌物による一次毒物反応と,これら物質が抗原的役割を演じて局所皮膚を感作して生ずるアレルギー性湿疹性反応と,或はその両反応の合併等が考えられる。これらの考えから,細菌性物質が一種のallergenic contactantとして湿疹性変化を生じたと考えられる場合に,これを細菌性湿疹ないし細菌疹と呼ぶことも提唱されている。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.