Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.緒 言
私共は赤色尿を訴えて来院する患者に屡々遭遇する。かかる場合は問診,膀胱尿の外観あるいは尿沈渣検鏡等により薬剤による着色か否かを検し自然排尿の時は下部消化器,女性に於ては性器よりの出血の混入に注意する。同時に血色素尿でないことを鑑別しなければならない。尿沈渣及び検鏡により赤血球を多数認めた時に初めて血尿と判定される。しかし尿中には正常状態に於ても赤血球が混入しており,その数は24時間尿中に健康人で0〜500,000コ(但し正常人の60%は0コ)とされ,これは顕微鏡的強拡大で3〜5視野中1コに相当する1)2)。検尿成績より尿路の出血であることが判明した場合は,更に三杯試験法(第1表)3)尿道鏡及び膀胱鏡検査法,尿管カテーテル法等を施行し出血部位を確認すると共に原因の解明に努めねばならない。
血尿を来たす疾患には種々あるが,それらは①系統的疾患の症状としてくるもの,②全身的疾患の一分症として泌尿器病変をきたす疾患,③病理学的変化が泌尿性器に限局しているもの,④周囲臓器の病変が尿路に波及せる場合等に大別される。これらの各群に属する疾病の詳細については成書2)4)5)6)7)に述べてあるので,それらを参照されたい。血尿患者の外来患者総数中に占める割合については行徳等8)。 百瀬等9),前川10)などの報告があるが,私共の教室における過去4年間の成績では外来患者5031例中血尿を主訴として来院した患者は507例9.9%であつた(第2表)。その原因疾患は第3表の如くであり,腫瘍18.9%(内16.6%内が悪性),尿路結石症15.8%,尿路の炎症36.5%であつた。これらの疾患はいずれも症状や,諸検査により診断しうるが,なかには血尿以外に自覚症状を認めず,腎生検を含む各種臨床検査においても何ら異常所見を認めえぬ腎性出血即ち本態性腎出血が存在した。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.