トピックス
ムピロシン耐性ブドウ球菌
菊池 賢
1
1東京女子医科大学感染対策科
pp.1561-1563
発行日 2000年12月1日
Published Date 2000/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905692
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ムピロシンとは
ムピロシン(pseudomonic acid A)はPseudomonas fluorescensの産生する,従来知られているどの抗生物質にも属さないユニークな化学構造を持った抗生物質である.その作用機序はtRNA合成酵素の1つ,イソロイシルtRNA合成酵素(isoleucyl-tRNA synthetase;IRS)の競合阻害である1).このため,他の抗生物質とは交差耐性を示さない.
ムピロシンの発見は1887年と古く2),抗菌スペクトラムはブドウ球菌属,一部のレンサ球菌,Haemophilus influenzae,Neisseria などに限定されている1).抗菌スペクトラムで最も重要な特徴は,鼻腔に常在するCorynebacterium,Micrococcus,Propionibacteriumなどにスペクトラムが及ばないことである1).このため,鼻腔のMRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)除菌薬として使用した場合に,MRSAを含むブドウ球菌のみに作用し,他の常在菌の発育を阻害せず,効率よく除菌が行えると同時に,常在菌叢の回復ももたらされる.
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